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青い鳥(Twitter)。

 Twitterのモーメントにまとめたショートショートをここにメモ。
 愛知県のある街にある男がいた。
平凡な地方都市、どこにでもいるような平凡な男。
とりあえず彼のことは、Eと呼ぶことにしよう。
彼は平凡な男ながら、向上心はそれなりに持ち合わせていたので、休日は何がしか役に立ちそうなことを勉強していた。
資格の勉強、語学の勉強、読書、ネットでの情報収集などなど。

 そんなある日、彼はインターネットで情報収集していたのだが、眠たくて眠たくて、うとうとしていた。
過去のいろいろな思い出が走馬灯のように巡る。
夢を見ているのか、あるいは、まだ眠りに落ちる前の思考の中なのか、判然としない。
そのとき、突然、頭上から大きな青い鳥が舞い降りてきた。
鳥は何かつぶやきながら、優雅に舞い降りる。
驚くべきことに、その鳥は人間の言葉をしゃべっているようだった。
最初は何語か分からなかったが、次第に明瞭な日本語に聞こえてきた。

Eは驚きながらも、多分自分は今、夢の中なのだろうと冷静に考えることができた。
どうせならこの夢を楽しもうと思い、この奇妙な鳥に話しかけてみた。
「こんにちは、鳥さん、日本語が上手ですね。」
鳥はしばらく優雅に、自身の羽をくちばしで整えていたが、思い出したようにEの方に顔を向けて言った。
「ほぉ、貴様、わしが見えるのか。
久しぶりだ、わしが見える人間に、こんなところで出会うとは。」

 妙にリアルな夢である。
その鳥の気配、息遣い、におい。
とても夢とは思えない。
「あなたは一体、何者ですか。どこから来たのですか。」
Eは思わず大きな声で、鳥に質問した。
鳥は瞬きもせずにEの顔を見つめていたが、やがてニヤリと笑って答えた。

「これが夢であるならば、わしは神にも仏にも、悪魔にも死神にもなるだろう。
お前は一体、何を望んでいるのだ。」
Eはその答えを聞いて少し驚いてしまった。
しかし、確かにこれが夢であるならば、この鳥の言うとおりだと納得してしまった。
Eも鳥も沈黙し、しばらく時が静かに流れた。

 Eは黙って考えていた。
彼の脳内で思考回路が、グルグル音を立てているかのような感覚が続いた。
Eは鳥に質問してみることにした。
この鳥はきっと、質問にはきちんと答えてくれるだろう。
「私があなたは神だと思えば、あなたは神になるのですか。
私があなたは悪魔だと思えば、あなたは悪魔になるのですか。」
鳥は無表情に見える顔でEを見つめながら、Eの質問を聞いていた。

そして鳥はからかうような顔で、Eの問いに答えた。
「もしわしが神になったら、お前は何を望むのだ。
もしわしが悪魔になったら、お前は何を望むのだ。
そもそもお前の目には、わしは一体、どのようなものとして映っているのだ。」

Eは鳥からの質問に少し混乱してしまい、最後の質問にだけ、反射的に答えた。
「私の目には・・・あなたは鳥です、少し大きな青い鳥です。
言葉を、日本語をしゃべっている・・・」
鳥は微笑みながら言った。
「お前はおもしろいやつだな。そうか、青い鳥に見えるか。
それで、その青い鳥はこの後、何をすればよいのかな。
お前は、その目に映る青い鳥に、何を望むのだ。」

Eは少し不思議に思いながら答えた。
「鳥に・・・あなたに一体、何ができるのですか。
お金が欲しいと言ったら、くれるのですか。
超能力のような特別なものが欲しいと言ったら、授けてくれるのですか。」
鳥は少しあきれたような顔で答えた。
「これが夢であるならば、何でも思いのままだろう。
お前の本当の望みは何なのだ。
本当にお金でよいのか。超能力でよいのか。」
そして鳥は、また微笑みながら言った。
「いずれにしろ、夢から覚めれば何も残らんだろう。」

 Eは考えた。
たとえ夢でも、どうせなら、夢から覚めた後でも残るものがいい。
彼は合理主義者なのだ。彼は合理的に考えて、鳥にまた質問した。
「青い鳥は幸せの象徴です。
あなたが幸せの青い鳥になれるのであれば、他の誰かを幸せにできますか。
私は残念ながら、こんな夢で幸せになれる性質の人間ではありません。」
鳥は少し驚いたような顔で言った。
「なるほど、おもしろい考えだ。
このような夢で幸せになれる性質、境遇の人間は、この広い世の中、探せばいくらでもいるだろう。」

 Eは鳥に最後の質問をした。
「あなたが他の誰かの夢に飛んで行って、私が夢から覚めたとき、私は何も覚えていないでしょう。
どうせ夢ですから。
最後に聞きますが、あなたは今度は、どんな人のところへ、どんな姿で舞い降りるつもりですか。」
鳥は鷹揚に答えた。
「どんな姿も何も、それは夢を見る人が勝手に決めることだろう。
どんな人のところへ・・・今度は、お前よりも年寄りの人間を選ぶだけさ。」

「人生、最後に残るのは思い出だけだ。それが分かる老人のところへ行くとするか。
お前はまだまだ、未熟者なのだ。」
それは鳥の最後の捨て台詞となった。

そう言うが早いか、鳥は勢いよく羽ばたいて飛んで行った。
Eは驚いて部屋の天井を見上げたが、鳥の姿はどこにもなかった。
ただ、カラスよりも少し上等な鳴き声が、遠くから聞こえてきた。
もうすぐ夜が明け、朝が来るのだろう。

 Eは目覚めた。
椅子に腰かけたまま居眠りしていたようだ。
時計を見ると、まだ数時間しか経っていない。
夜が明けるまで、まだ少し時間がある。

Eはつぶやいた。
「あの鳥に、僕のTwitterの制限解除してくれって頼んでたら、どうなっていたんだろう・・・
いや、夢の中で制限解除されたって、目が覚めたら制限されたままなんだから、意味ないよな・・・」
Eはベッドに潜り込んで、もうひと眠りすることにした。
そして、眠りから目覚めたときにはもう、彼はあの鳥のことなど覚えていないだろう。

おしまい。

この記事を英語で読む。

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