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平成30年度愛知県公立高校入試(B)国語問4【古文】

1 原文

 分別無くて分別面する人こそいとにくけれ。
其の分別面する人は常に物もいはず、いかにも神妙に構へ、公事沙汰の場にては、分別のよき人の一番に理究をいふてのきたるあとに、頭を傾げ、事ありげに作り声して存分をいひ、定めて違ひたる理の有るこそするらめと思へば、さはなくて始めの理にわけもなき枝葉をつけてながながといひ、常に物をもいはず公事沙汰の場にては、いらざる事もながながといふを分別者と心得ると見えたり。
さにはあらず、そさうにもあれ、閑かにもあれ、理筋を違へずいふをこそ、分別者といふべけれ。
かように無分別にて分別面する者を、主たる人見誤りて後見をさすれば、万事物が左前になりて、下々まで風俗悪しくなるものなり。
(『見の鏡』より)

2 現代語訳

 分別がないのに分別があるような顔をする人が、全く気に入らない。
そういう分別顔する人は、普段は何も言わないで、いかにもしっかりしている様子で、公の評議の場においては、分別をよくわきまえる人が一番に筋の通った論理を言って退いた後に、頭を傾げ、いかにも何か事情がありそうな作り声で思うところを言い、きっと論理の相違があるに違いないと思ったら、そうではなくて始めの論理に無意味な枝葉をつけて長々としゃべったりする。
普段は何も言わないで公の評議の場においては、余計なことを長々としゃべるのが分別のある者と思っているらしい。
そうではなく、そそっかしい振る舞いであれ、落ち着いた態度であれ、筋の通った論理を間違えずに言う人こそ、分別のある者と呼ぶべきである。
このように分別がないのに分別顔する者を、主だった人々が見誤って補佐役などさせれば万事、物事が順調にいかなくなって、下々まで生活上の習慣が悪くなっていくものである。

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