令和4年度愛知県公立高校入試(A)国語問4【漢文】
1 原文
宓子、亶父を治ること三年、而して巫馬期、絻衣短褐し、容貌を易へ、往きて化を観る。
夜漁する者の魚を得て之を釈つるを見、巫馬期問ひて曰はく、
「凡そ子の魚を為す所は、得んと欲すればなり。今得て之を釈つるは何ぞや。」と。
漁する者、対へて曰はく、
「宓子は人の小魚を取るを欲せざるなり。得る所の者は小魚なり。是を以て之を釈つ。」と。
巫馬期、帰りて以て孔子に報じて曰はく、
「宓子の徳至れり。人の闇行するに、厳刑の其の側に在ること有るがごとからしむ。
宓子、何を以て此に至れるか。」と。
宓子、何を以て此に至れるか。」と。
孔子曰はく、
「丘、嘗て之に問ふに治を以てす。言ひて曰はく、『此に誠ある者は、彼に刑はる。』と。
宓子、必ず此の術を行ふならん。」と。
(『淮南子』より)
2 現代語訳
宓子が亶父を治めてから三年、巫馬期は粗末な衣装を身につけ、容貌を変え、亶父へ行ってその変化の様子を見た。
夜に漁をする者が獲った魚を逃がすのを見て、巫馬期は尋ねて言った。
「そもそもあなたが漁をするのは、魚を手に入れたいからである。今、獲った魚を逃がしたのはどうしてですか。」
漁をする者は、答えて言った。
「宓子は、人々が稚魚を獲ることを望みません。獲ったのは稚魚でした。だから逃がしたのです。」
巫馬期は帰り、孔子に報告して言った。
「宓子の徳が行き届いたのです。人が夜にこっそり行動するときも、まるで厳しい刑がすぐ近くにあるかのように、行動しています。
宓子はどのようにして、これを実現したのでしょうか。」
孔子は言った。
「丘、以前宓子にどのように世を治めるのかを尋ねた。宓子はこう言った。『こちらに誠があれば、あちらにも表れます。』