生活費が$\sqrt{\text{人数}}$倍になるという経験則を中学数学で考察してみた。
1 生活費が$\sqrt{\text{世帯人数}}$倍になるという経験則
生活費が$\sqrt{\text{世帯人数}}$倍になるという経験則が、たまにライフハック系あるいはファイナンス系の記事で紹介される。一人暮らしの生活費を$1$とすると、世帯人数が2人になると生活費が$\sqrt{2}$に、世帯人数が3人になると生活費が$\sqrt{3}$に、世帯人数が4人になると生活費が$\sqrt{4} = 2$に、・・・・・・
2 この経験則の根拠
生活費の具体的な中身を見てみると、その全てが人数倍で増えていくものばかりではない。それどころか人数が増えてもあまり増えず、一人あたりの負担額が減るものもある(シェアハウスの家賃等)。
この経験則は、直感に合致するし、経験的にもおおよその目安として妥当である。
ただ、あくまでも目安に過ぎず、厳密な理論がある訳ではないと思うので、中学数学を使って自分なりに少し考えてみた。
3 世帯人数が2人になると生活費が1.5倍になる場合
$\sqrt{2} = 1.41421356\cdots$なので、とりあえず$1.5$倍として考えてみる。生活費における固定費を$F$、一人あたりの変動費を$V$とおく。
世帯人数が2人になっても固定費は変わらず、変動費の合計は$\text{一人あたりの変動費} \times 2$になる。
$\dfrac{F + 2V}{F + V} = 1.5$
$F + 2V = 1.5(F + V)$
$F + 2V = 1.5F + 1.5V$
$2V - 1.5V = 1.5F - F$
$0.5V = 0.5F$
$V = F$
すなわち、$F : V \; (\text{固定費と一人あたりの変動費の比}) = 1 : 1$の場合に、世帯人数が2人になると生活費が$1.5$倍になる。
ちなみに、$F : 2V = F : 2F = 1 : 2$なので、変動費の合計は固定費の$2$倍である。
このモデルの本質は、固定費と(一人あたりの)変動費の比である。
4 世帯人数が2人になると生活費が$\sqrt{2}$倍になる場合
$\dfrac{F + 2V}{F + V} = \sqrt{2}$$F + 2V = \sqrt{2}(F + V)$
$F + 2V = \sqrt{2}F + \sqrt{2}V$
$2V - \sqrt{2}V = \sqrt{2}F - F$
$(2 - \sqrt{2})V = (\sqrt{2} - 1)F$
$V = \dfrac{\sqrt{2} - 1}{2 - \sqrt{2}}F = \dfrac{(\sqrt{2} - 1)(2 + \sqrt{2})}{(2 - \sqrt{2})(2 + \sqrt{2})}F = \dfrac{2\sqrt{2} + 2 - 2 - \sqrt{2}}{4 - 2}F = \dfrac{\sqrt{2}}{2}F$
$F : V = F : \dfrac{\sqrt{2}}{2}F = 1 : \dfrac{\sqrt{2}}{2} = 1 : 0.70710678\cdots$
すなわち、$F : V \; (\text{固定費と一人あたりの変動費の比}) \fallingdotseq 1 : 0.7$の場合に、世帯人数が2人になると生活費が$\sqrt{2}$倍になる。
ちなみに、$F : 2V = F : 2 \times \dfrac{\sqrt{2}}{2}F = 1 : \sqrt{2}$なので、変動費の合計は固定費の$\sqrt{2}$倍である。
5 世帯人数が$x$人になると生活費が$\sqrt{x}$倍になる場合
$\dfrac{F + xV}{F + V} = \sqrt{x}$
$F + xV = \sqrt{x}(F + V)$
$F + xV = \sqrt{x}F + \sqrt{x}V$
$xV - \sqrt{x}V = \sqrt{x}F - F$
$(x - \sqrt{x})V = (\sqrt{x} - 1)F$
$V = \dfrac{\sqrt{x} - 1}{x - \sqrt{x}}F = \dfrac{(\sqrt{x} - 1)(x + \sqrt{x})}{(x - \sqrt{x})(x + \sqrt{x})}F = \dfrac{x\sqrt{x} + x - x - \sqrt{x}}{x^2 - x}F = \dfrac{x\sqrt{x} - \sqrt{x}}{x(x - 1)}F = \dfrac{(x - 1)\sqrt{x}}{x(x - 1)}F = \dfrac{\sqrt{x}}{x}F = \dfrac{1}{\sqrt{x}}F$
$F : V = F : \dfrac{1}{\sqrt{x}}F = 1 : \dfrac{1}{\sqrt{x}}$
すなわち、$F : V \; (\text{固定費と一人あたりの変動費の比}) = 1 : \dfrac{1}{\sqrt{x}}$の場合に、世帯人数が$x$人になると生活費が$\sqrt{x}$倍になる。
ちなみに、$F : xV = F : x \times \dfrac{1}{\sqrt{x}}F = 1 : \sqrt{x}$なので、変動費の合計は固定費の$\sqrt{x}$倍である。
6 世帯人数が$x$人になると固定費と一人あたりの変動費の比が$1 : \dfrac{1}{\sqrt{x}}$になる?
結局は、「世帯人数が$x$人になると生活費が$\sqrt{x}$倍になる」という論理を、中学数学(式の変形)を使って、「世帯人数が$x$人になると固定費と一人あたりの変動費の比が$1 : \dfrac{1}{\sqrt{x}}$になる(固定費と変動費の合計の比は$1 : \sqrt{x}$)」という論理に変換しただけである。スケールメリットというのは、例えば食材を一人分だけ買うよりも、数人分をまとめて買った方が割安に買えるといった話である。
なお、固定費と変動費の区別は、「この支出は固定費、この支出は変動費」と硬直的に考えるのではなく、「生活費には人数に比例しない部分と比例する部分がある」と割合的に考えるとよいと思う。
7 世帯人数が$x$人になると生活費が$x$倍になる場合
それでは、世帯人数が$x$人になると生活費が$\sqrt{x}$倍になるのではなく、$x$倍になる場合はどうだろうか。$\dfrac{F + xV}{F + V} = x$
$F + xV = x(F + V)$
$F + xV = xF + xV$
$F - xF = xV - xV$
$(1 - x)F = 0$
$F = 0$
これは生活費における固定費の割合が0の家計である。
全て変動費なので、人数が$x$倍になれば生活費も$x$倍になる。
数学的、論理的には当たり前の結論だろう。