平成25年度第1回高認国語問4【漢文】
1 原文(書き下し文)
斉の宣王射を好む。人の己能く強弓を用ふと謂ふを説ぶ。その嘗て用ふる所は三石に過ぎず、以て左右に示す。左右皆試みにこれを引き、関に中して止む。皆曰はく、「此れ九石を下らず。王に非ずんば、それ孰か能く是を用ひん」と。宣王の情、用ふる所は三石を過ぎずして、終身自ら以て九石を用ふと為す、豈に悲しからずや。直士に非ずんばそれ孰か能く主に阿らざらん。世の直士、その寡衆に勝たざるは、数なり。故に乱国の主、患ひは三石を用ひて九石と為すに存す。(『呂氏春秋』より)
2 現代語訳
斉の宣王は弓矢を好んだ。強弓を使いこなすことができると人に言われるのを喜んだ。使用していたものは三石に過ぎず、これを側近に見せた。側近は皆、試しにこれを引いて、半分ほど引いてやめた。皆言った。「これは九石を下りません。王様でなければ、これを使いこなすことはできません。」宣王の情として、使用していたものは三石に過ぎなかったが、死ぬまで自ら九石を使いこなすとした。悲しことではないか。直士でなければ、主君に阿らずに直言することはできない。世に直士が少なく、阿る家臣の多さに敵わないのは、自然の成り行きである。故に乱国の君主の危うさは、三石を使用して九石を使いこなすと言うことにある。・高等学校卒業程度認定試験(高認)国語過去問古文・漢文現代語訳に戻る。