平成26年度第2回高認国語問4【漢文】
1 原文(書き下し文)
孟嘗君夏侯章に奉ずるに、四馬百人の食を以てし、これを遇すること甚だ歓ぶ。夏侯章言ふ毎に、嘗てこれを毀らずんばあらざるなり。或ひと以て孟嘗君に告ぐ。孟嘗君曰はく、「文以て夏侯公に事ふる有り。言ふ勿れ」と。董之蘩菁以て夏侯公に問ふ。夏侯公曰はく、「孟嘗君は、重きこと諸侯に非ざるなり。而るに我に四馬百人の食を奉ず。我分寸の功無くして此れを得たり。然れども吾がこれを毀るは、以てこれを為さんと。君の長者為るを得る所以は、吾がこれを毀るを以てなり。吾身を以て孟嘗君の為にす、豈に言を待たんや」と。
(『戦国策』より)
2 現代語訳
孟嘗君は夏侯章をもてなすのに、貴族と同等の厚いもてなしをして、これをもてなすことを非常に喜んだ。夏侯章は何かにつけて、孟嘗君の悪口を言っていた。ある人が孟嘗君にこれを告げた。孟嘗君は言った。「私はこうして夏侯公をもてなしているのです。もうそれは言わないように。」董之蘩菁はこのことを夏侯公に質問した。夏侯公は言った。「孟嘗君の地位は諸侯ではない。それなのに私に対して、貴族と同等の厚いもてなしをする。私は少しばかりの功績もなく、これを得ている。しかし私が孟嘗君の悪口を言うのは、それによって功をなすためである。孟嘗君が徳の高い立派な人物である理由は、私がその悪口を言うからである。私は身をもって孟嘗君の為になることをなす、これ以上説明する必要はないだろう。」
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