平成29年度第1回高認国語問6【漢文】
1 原文(書き下し文)
子英なる者、舒郷の人なり。善く水に入りて魚を捕らふ。赤鯉を得て、その色の好きを愛で、持ち帰りて、池中に著く。数米穀を以て之を食ふ。一年にして、長丈余、遂ひに角を生じ、翅翼有り。子英怪異し、之に拝謝す。魚言ふ、「我来たりて汝を迎ふ。
汝背に上れ。汝と倶に天に昇らば、即ち大いに雨ふらん」と。子英その魚の背に上り、騰昇して去る。
歳歳来たりて故舎に帰り、食飲して妻子を見る。魚復た来たりて之を迎ふ。此くの如きこと七十年。故に呉中の門戸は、皆神魚を作り、遂に子英の祠を立つ。
子英水を楽しみ 游ぎ捕らふるを職と為す
霊鱗来たり赴くに 煒ける厥の色有り
之を養ひ之を長ぜしめ 角を挺し翼を傅く
遂に雲螭に駕し 太極に超歩す
(『列仙伝』より)
2 現代語訳
子英は舒郷の人であった。泳ぎが達者で魚を捕まえた。赤い鯉を捕まえて、その色合いの良さを気に入り、持ち帰って、池の中で飼った。しばらく米をやってこれを飼育した。一年たって、大きさが一丈ほどになり、遂いに角が生え、翼がついた。子英は怪異し、これに拝謝した。魚は言った。「我は汝を迎えにやって来た。
汝は我の背に乗れ。汝と共に天に昇れば、たちまち大いに雨が降るだろう。」子英はその魚の背に乗り、高く飛翔して去った。
年々自宅に帰ってきて、妻子に会って飲んだり食べたりした。魚がまたやって来てこれを迎える。このようにして70年。故に呉中の人の家では、皆神魚を作り、遂に子英の祠を立てた。
子英は水を楽しみ 泳いで魚を捕ることを職としていた
不思議な魚がやって来た 燃えるような赤い色だった
これを養い育てると 角が生えて翼をつけた
遂に雲の中を雨竜に乗って 宇宙を駆け巡った
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