『永遠の旅人・神無月京介(2)【大島ルリコ編】』第5章
大人気アイドルだった大島ルリコが霧深い山中で、異世界の旅人・神無月京介に救出されるの巻
第5章 夢幻郷からの脱出
大木の枝の上から、戦いの様子を見ていたルリコは唖然とした。あの恐ろしい大熊が木っ端微塵に吹き飛んだ上に、跡形もなく霧散してしまったのだ。
大木から降ろされたルリコは京介にお礼を言った。
「ありがとうございます。あなたは命の恩人です。」
「いえいえ、大したことはしていませんよ。」
「私、どうしても元の道に戻れなくて、途方に暮れていたんです。」
「申し訳ないです。うっかりしてました。あなたは夢幻郷に迷い込んだのですから、出口もよく分かりませんよね。」
「夢幻郷・・・ここの地名ですか?」
「まぁ、そんなところです。さぁ、長居は無用です。出口まで先導しますよ。」
京介を先頭に、二人は無言でしばらく歩いていった。
そうすると、いつの間にか元の道に戻ることができた。
「ありがとうございます。あっ、そう言えば、まだあなたのお名前を・・・」
ルリコが顔を上げると、先に行ってしまったはずの友人たちが彼女を取り囲んでいた。
「ルリちゃん、大丈夫?」
友人の一人に声をかけられ、ルリコは答えた。
「うん・・・大丈夫。偶然通りかかった男の人に助けてもらって・・・」
「男の人?」
ルリコは周囲を見渡したが、京介の姿は見えなかった。
「ルリコさん、何かあったんですか?」
ルリコはこれまでの出来事を友人たちに説明しようと思ったけれど、不思議なことに何も思い出すことができない。
「あれっ、私、えーと、途中でめまいがして・・・」
「体調が悪いの?本当に大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。」
天気も回復して、雨も止み、晴れ間が見えてきた。
「さぁ、山頂はすぐそこです。小さな小屋があるので、そこでお弁当を食べながら休憩しましょう。昼食後に、私がみなさんにおいしいコーヒーをお淹れしましょう。」
ルリコは再び、友人たちと一緒に山道を登っていった。
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