『幽玄鉄道の夜(1)【豊川稲荷の人食い大鬼】』第1章
国民的な人気女優・長沼マサミが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と豊川稲荷で人食い大鬼を目撃するの巻
第1章 幽玄鉄道
草野崇はどこにでもいそうな平凡な男である。しかし、彼の父親は生前、非凡な学者であった。
専門は妖怪学で、大学で講座を担当するだけでなく、妖怪解説本がそこそこヒットして、テレビでも妖怪博士としてもてはやされたものだった。
そんな父が数年前に亡くなり、遺品を母と整理していたときに、不思議な乗車券を見つけた。
それは幽玄鉄道の乗車券だった。幽玄鉄道は普通の鉄道ではない。
現実世界と妖怪世界を行き来する鉄道である。
生前に父から話だけは聞いていたけれど、まさか本当に存在するとは思わなかった。
草野は時々この乗車券を使い、幽玄鉄道で旅を楽しんでいる。
・『幽玄鉄道の夜(1)【豊川稲荷の人食い大鬼】』目次に戻る。