『幽玄鉄道の夜(3)【桜淵公園の人食い河童】』第6章
国民的な人気女優・深川キョウコが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と桜淵公園で人食い河童を目撃するの巻
第6章 次の駅へ
二人は駅に着くと、そのまま幽玄鉄道に乗り込んだ。全速力で走ってきたので、列車の座席に座っても、しばらく話をすることもできなかった。
ようやく呼吸が整ってきたところで、キョウコが草野に聞いた。
「必死に走って逃げてきましたけど、一体何があったんですか?」
草野は答えた。
「河童が出たんです。」
キョウコは驚いて言った。
「河童って・・・あの河童ですか?」
草野は深刻な表情で言った。
「新城の河童は凶暴なんです。川に引きずりこまれた人間は、内臓を食われてしまうんです。」
しばらく二人は黙っていた。
何人の観光客が河童に捕まり、川に引きずり込まれたのだろうか?
キョウコは言った。
「私、新城のホテルで一泊するつもりだったんですけど、次の駅でホテルを探すことにします。」
草野は答えた。
「その方がいいでしょう。」
動き出した列車の窓から見える景色は、相変わらず、美しく幻想的だった。
この世界は、いつまでも、どこまでも、美しく幻想的であり、そして残酷なのだと草野は思った。
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