『幽玄鉄道の夜(1)【豊川稲荷の人食い大鬼】』第5章
国民的な人気女優・長沼マサミが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と豊川稲荷で人食い大鬼を目撃するの巻
第5章 殺生戒
大通りまで出ると、右からは青鬼が、左からは黒鬼が歩いてくる。青鬼も黒鬼も、逃げ惑う人々を指でつまみ上げては、口に放り込んでバリバリ食べている。
草野とマサミは細い裏道を通り、駅にたどり着いた。
二人は幽玄鉄道に乗り込み、座席に座った。
草野はマサミに言った。
「大変なことになりましたね。」
マサミが草野に聞いた。
「びっくりしました。あの鬼たちは一体なんなんですか?」
草野はマサミの質問に答えた。
「豊川稲荷では時々、あのような鬼が出没して人を食べるのです。理由は分かりませんが、殺生戒を忘れてしまった現代人を懲らしめるために、神仏が遣わしたものだと言う人もいます。」
「そうなんですか。恐ろしい鬼ですね・・・」
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