『幽玄鉄道の夜(6)【伊良湖岬の人食い大イカ】』第1章
国民的な人気女優・蟻村カスミが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と伊良湖岬で人食い大イカを目撃するの巻
第1章 蟻村カスミ
草野崇は幽玄鉄道で旅を続ける。列車の車窓から見えるのは、月明かりに照らされて、いつまでも、どこまでも、美しく幻想的な景色。
草野は食堂車で軽食をとり、食後のコーヒーを楽しんでいた。
食堂車から元の座席に戻ると、向かいの座席に女性が座っていた。
「失礼します。」
そう言ってから、草野は元の座席に座った。
「ごめんなさい。誰も座っていなかったので。」
女性がなぜか謝るので、草野は言った。
「いえいえ、別に指定席ではないんですから。誰がどこに座ったっていいんですよ。私は豊橋駅から乗り込んで、たまたまここに座って、ずっとここに座っていただけなんです。」
そう言いながら、草野は彼女の顔を見て驚いた。
彼女は国民的な人気女優・蟻村カスミだった。
・『幽玄鉄道の夜(6)【伊良湖岬の人食い大イカ】』目次に戻る。