『幽玄鉄道の夜(4)【湯谷温泉の人食い化け猫】』第1章
孤高の天才アーティスト・鬼瓦チヒロが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と湯谷温泉で人食い化け猫を目撃するの巻
第1章 鬼瓦チヒロ
草野崇は車窓から景色を眺めていた。列車は山の中を走っているようで、窓からは木々が見えるだけである。
時々、短いトンネルを通り抜けた。
外は少し肌寒いけれど、車両は快適な室温だった。
草野がいる車両は空いていた。
列車が駅に停車するたびに、降りる乗客もいれば、乗り込んでくる乗客もいる。
しばらくしてから、後の車両から女性が歩いてきた。
彼女は空いている座席を探しているようだった。
「ここ、よろしいでしょうか?」
話しかけられた草野は、彼女の顔を見て驚いた。
彼女は孤高の天才アーティスト・鬼瓦チヒロだった。
草野は空いている向かいの座席に向かって右手を差し出し、チヒロに答えた。
「あっ、はい、空いてます。どうぞお座りください。」
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