『東三河今昔【創作】物語集(10)【水守カオリ編】』第6章
東三河の文化会館でコンサートを開催するご当地ソングの女王が、豊川で河童にさらわれたけれど霊能探偵に救出されるの巻
第6章 子どもの河童
岸辺に着いてからよく見てみると、彼女の近くにいたのは河童の子どもだった。岸田は驚嘆して言った。「こんな子どもの河童に、あんなすごいことができるのか?!」
神谷は岸田に説明した。
「すごいと言っても、ただの水しぶきですから、こけおどしに過ぎません。」
神谷はそう言って、河童にキュウリを手渡した。河童はキュウリをおいしそうに食べた。
「この河童は親からはぐれ、何を食べればいいのか分からないのでしょう。河童は雑食ですが、親から肉の味を教えられなければ、人間を襲うこともありません。」
岸田は神谷に聞いた。
「じゃあ、なんで水守さんを・・・」
それまで黙っていたカオリが口を開いた。
「親からはぐれてしまって、寂しかったんでしょう。」
キュウリを食べ終えると、河童は川に潜ってそのまま姿を消してしまった。
岸田は、神谷とカオリの顔を交互に見やりながら言った。
「あの河童・・・捕まえなくても大丈夫なんでしょうか?」
神谷は神妙な面持ちで言った。
「・・・大丈夫だと思います。多分、あれが最後の河童です。これからあの河童は、畑のキュウリやスイカを食べて生きていくのでしょう。」
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