『東三河今昔【創作】物語集(1)【佐々本ノゾミ編】』第6章
霊能探偵・神谷龍之心が、人気女優・佐々本ノゾミの依頼により、その夫・渡辺健の不浄地獄からの救出を試みるの巻
第6章 愛のロープ
ノゾミは神谷に聞いた。「どうやって・・・どうしたら彼を助け出すことができるんですか?」
神谷は彼女に教えた。
「ここは現実世界ではありません。精神世界です。あなたの精神、すなわちあなたの愛が彼を救います。彼を救い出すためのロープをイメージできますか?」
ノゾミは神谷の話に少し戸惑ったが、やがて目を閉じて一心に祈った。
すると一本のロープが現れ、するすると地獄の底に垂れ下がってく。
底まで到達したロープの端を見つけた健は、それをつかみ、ロープを必死で登っていった。神谷が叫んだ。
「あともう少しです!ノゾミさん、健さん、がんばって!!」
健は、ふとロープの下方を見下ろした。
そこには無数の亡者たちが集まっていて、ロープに群がり、我先にと登ってくるのだった。
彼は思わず叫んでしまった。
「バカヤロー!ロープが切れちまうだろぉおおーーー!!俺のノゾミの、愛のロープに触るんじゃねーーーよ!!!」
その瞬間ロープは、健が握っていた部分のちょうど真上でジュワァアッと焼き切れてしまった。
健は切れたロープもろとも、地獄の底に落下していった。
「あぁっ・・・!どうして?!」
ノゾミは絶望のあまり、涙を流して絶句した。神谷はため息をついて説明した。
「彼の邪心が炎となり、ロープを焼き切ってしまったんです・・・」
地獄の底からは相変わらず、亡者たちの苦しそうなうめき声が絶え間なく聞こえてくるのだった。
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