『東三河今昔【創作】物語集(7)【山野内スズ編】』第6章
名古屋に向かう暴走列車の中で、風魔の術師・山野内スズによる魔獣退治を東三河の霊能探偵が目撃するの巻
第6章 帰りの汽車
神谷はその後、東三河の地面師騒動で知り合った、名古屋市議会議員・大池エイコに会いにいった。今日の暴走列車の件を報告するとともに、遊郭の潜入調査について説明するためである。
「それで、エイコさん。今からその遊郭に潜入調査に行きますので、例の照魔鏡をお貸しいただけませんか?」
エイコは彼の報告を興味深そうに聞いていたが、遊郭の件については冷淡だった。
「神谷さん、暴走列車と風魔の術師についての報告、ありがとうございました。でも、照魔鏡はお貸しできません。」
神谷はそれでも食い下がった。
「しかし、美しい女性の魅惑と妖魔の誘惑を見分けるのは、私のような者には非常に難しいことなのです。照魔鏡がなければ・・・」
エイコは彼の話を遮って言った。
「たとえその相手が妖魔だとしても、被害はせいぜいあなたの股間にある粗品くらいでしょう?そんなことのために秘宝をお貸しすることはできません!」
神谷は彼女に反論した。
「粗品ではありません。珍宝です!」
「だまりなさい!!」
「・・・・・・」
エイコが眉を釣り上げて怒り出したので、神谷は絶句してしまった。
神谷は東三河に向かう汽車の中にいた。
暴走列車の件で身体的にも、そして精神的にもクタクタに疲れてしまったのだ。もう遊郭に遊びにいく元気もなかった。
「ハァーーー。なにがなんだか・・・」
彼はため息をつきながら、車窓から外の景色を眺めていた。
車窓から見える山も川も、田んぼも畑も集落も夜の闇に沈み、真っ暗であった。
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