『幽玄鉄道の夜(8)【豊橋公園広場のデイダラボッチ】』第1章
国民的な実力派歌手・杜口ヒロコが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と豊橋公園広場でデイダラボッチを目撃するの巻
第1章 杜口ヒロコ
草野崇が乗っている幽玄鉄道は、無限の鉄道である。その車窓から見える月夜の景色は、いつまでも、どこまでも、美しく幻想的である。
草野は車内販売で買ったコーヒーを飲みながら、流れる景色を楽しんでいた。
やがて彼は、しばらくうとうと居眠っていたが、ふと気付くと向かいの座席に女性が座っていた。
草野は寝ぼけながら彼女に言った。
「あぁ、どうも。」
「こんばんは。ごめんなさいね。」
女性が謝ったので、草野は言った。
「いえ、別にいいんですよ。私は一人旅ですから。そこは空席だったんです。私は豊橋駅から乗ってきたんです。あなたはどこから・・・」
そこまで言って、草野は彼女が誰なのか気付いて驚いた。彼女は国民的な実力派歌手・杜口ヒロコだった。
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