『東三河今昔【創作】物語集(7)【山野内スズ編】』第4章
名古屋に向かう暴走列車の中で、風魔の術師・山野内スズによる魔獣退治を東三河の霊能探偵が目撃するの巻
第4章 風魔の術師
悪魔将軍が召喚したのは、火属性の魔獣であった。蒸気機関の燃え盛る火室から召喚したものらしい。神谷は考えていた。
(どうしよう・・・火属性の魔獣か。やっかいな奴を残していきやがって。下手な攻撃魔法で仕留め損なうと、列車が火の海になってしまう。)
その時、後ろから女性の声がした。
「あら、大変ですね。火属性ですか。」
振り返ると、そこには美しい女性が立っていた。
「私が処理しましょう。」
彼女はそう言うと、いきなり魔法を詠唱した。風属性の魔法であるが、ただの風ではなかった。
凍てつく冷気の凄まじいかまいたちが、一瞬で炎の魔獣を切り裂いた。
その冷気は、先頭車両の床や壁を氷結させるほどであった。
ものすごい魔法を見せつけられて、神谷は呆然と固まっていた。彼女は神谷に言った。
「申し遅れました。私、風魔の術師・山野内スズと申します。」
神谷は彼女に名乗った。
「いえ・・・こちらこそ。私は神谷龍之心と申します。東三河の街で霊能探偵をしております。あぁ、後は私が処理しましょう。」
神谷はそう言うと、破邪の呪法を唱えた。
悪魔に乗っ取られていた運転士、機関士、そして車掌は、ようやく正気を取り戻した。
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