『東三河今昔【創作】物語集(9)【山多ユウ編】』第5章
東三河の山でハイキングしていた元人気モデル・山多ユウが妖怪・山ガールにさらわれ、地元の猟師と霊能探偵に救出されるの巻
第5章 粗末な山小屋
やがて二人は山ガールの住処と思われる、手作りの山小屋を見つけた。山小屋と呼ぶのもためらわれるような、本当にボロボロで粗末なものだった。
二人は山小屋の手前で立ち止まった。神谷が小声で言った。
「森田さん、どうするんですか?」
森田が言った。
「山ガールがこちらに気付かないように、慎重にやらないといけません。不意を突くんです。逆に、こちらが不意を突かれれば、ひとたまりもないでしょう。」
バキッ!
その時、物音が聞こえてきた。見ると、恐ろしい形相の山ガールがこちらをにらんでいる。
山ガールの右手には、血まみれの大きな出刃包丁が握られていた。森田が驚いて言った。
「しまった!」
山ガールの聴覚や嗅覚は獣よりも鋭いのだ。森田は急いで猟銃を準備しようとしたが、間に合わない。
山ガールは山犬のように俊敏なのだ。
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