『幽玄鉄道の夜(10)【鳳来三河三石の人食い大猿】』第1章
幽玄鉄道の旅人・草野崇が国民的な人気タレント・コールドサマー冷夏と、道の駅・鳳来三河三石で人食い大猿を目撃する夢を見るの巻
第1章 コールドサマー冷夏
無限の幽玄鉄道はどこまで続く。草野崇は車窓から景色を眺めていた。月明かりに照らされた景色は、いつまでも、どこまでも、美しく幻想的だ。
草野はまた、いつの間にかコックリコックリと舟を漕いでいた。
やがて草野は、向かいの座席に誰かが座っていることに気が付いた。
「・・・どうも、こんばんは。」
草野がそうあいさつすると、彼女は微笑んであいさつを返した。
「こんばんは。」
笑顔の素敵な女性である。草野はまだ半分寝ぼけながら彼女に話しかけた。
「私は豊橋駅から、ずっと一人で旅をしてきたんです。いろんな駅で下りて、いろいろなことがありました。しかし、不思議なんですけど、この列車に乗り始めてから、そんなに時間が経っていないような感覚なんです。ところで、あなたは・・・」
草野は彼女の顔を見て、言いかけた言葉をのみ込んだ。彼女は国民的な人気タレント・コールドサマー冷夏だった。
・『幽玄鉄道の夜(10)【鳳来三河三石の人食い大猿】』目次に戻る。