いじめと空気と日本人。
1 いじめの本質
学校におけるいじめの問題は昔から存在し、今も時折ひどいいじめが顕在化してニュースになったりしている。いじめは悪いことだという認識は共有されているのだけれど、いじめは悪だという認識と学校や行政における無謬性の神話と事なかれ主義が結び付くと、いじめがあってもその存在を無視して否定するという最悪の結果となったりする。
いじめは悪いことだけれど、人間集団にある程度の閉鎖性があれば発生し得るものだということも認める必要がある。
・閉鎖された空間に人間を密集させると、人は人をいじめるようになる(Books&Apps)
2 閉鎖性に原因がある
閉鎖性に原因があることを認めれば、次にそれに対する対策を考えることができる。学校におけるいじめの問題について言えば、児童生徒や保護者から要望があれば転校が容易にできるようにすればいいし、小中学校でも通信制を認めて、どうしても学校に行けない児童生徒は通信制で学べるようにすればいいと思う。
いじめの問題は社会人になってからも会社などの職場で発生し得るものだけれど、これも職場の閉鎖性に起因する。
これに対しても閉鎖性の緩和が直接的な対策だと思う。
いじめの問題に限らず、終身雇用は現代日本の様々な問題の諸悪の根源となっているので、早々にこの制度を改めるべきなのだけれど、政治経済的にはそのような抜本的な改革は困難なのかもしれない。
・サルでもわかる「終身雇用がブラックを産む」わけ(Joe's Labo)
3 悪は陳腐であり凡庸である
ナチスによるユダヤ人迫害について、ハンナ・アーレントは、悪が陳腐であり凡庸であることを指摘した。この指摘は問題の本質を抉り出していたために、ナチスを擁護するのかという非難さえ生じたけれど、非常に重要な真理であると思う。
・イエルサレムのアイヒマン(ウィキペディア)
シリアルキラーのような特異な犯罪者の残虐性は別として、普通の真面目な人間が、特に集団内で深刻な人権侵害を容認する問題は、普遍的な問題だという意味で、陳腐であり凡庸なものなのだろう。
4 人間を科学する
いじめの問題に限らず、人間の集団や社会の問題を解明し解決するためには、人間を科学的に考察することが重要になる。進化によって生まれ今も進化の途上にある、人間という種の生物学的な欠点や特徴が種々の問題の原因であることは、もっと広く深く理解され認識されるべきことだと思う。
・孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか(読書メーター)
5 この国を亡ぼすもの
この国は空気によって支配されてきた。国を亡ぼすような戦争を遂行し、国を亡ぼすような失政を遂行し、そして今、この国の未来は決して明るいものではない。
小室直樹先生の警鐘もむなしく、この国は静かに緩やかに、国力を喪失して行くことになるのだろう。
・日本いまだ近代国家に非ずー国民のための法と政治と民主主義ー(Amazon)