第143条【法的手続きからの保護】、第144条【能力喪失による大統領の罷免】、第145条【弾劾による大統領の罷免】
第9章【行政部】
第2部【大統領及び副大統領】
第143条 大統領又はその職務を執行する者に対して、その在任中、いかなる裁判所においても、刑事訴訟を提起又は継続してはならない。2 大統領又はその職務を執行する者に対して、その在任中、この憲法に基づいて権限を行使して行ったこと又は行わなかったことに関して、いかなる裁判所においても民事訴訟を提起してはならない。
3 第1項又は第2項の訴訟を提起できる期間を制限する規定が法律にある場合、大統領職にある又はその職務を執行する期間は、当該法律の期間の計算において算入しないものとする。
4 本条に基づく大統領の特権は、ケニアが加盟している条約でそのような特権を禁止しているものに基づいて、大統領が訴追される犯罪には及ばないものとする。
第144条 下院議員は、総議員の4分の1以上の賛成により、大統領の職務の執行に関する、身体的又は精神的能力の調査のための動議を提出することができる。
2 第1項の動議が下院の総議員の過半数の賛成を得た場合、
(a)議長は、2日以内にその決議を最高裁判所長官に通知するものとする。
(b)大統領は、本条に定められた手続きの結果が出るまで、引き続きその職務を執行するものとする。
3 議長から決議の通知を受けてから7日以内に、最高裁判所長官は、以下の者で構成される裁判を任命する。
(a)ケニアの法律により医療従事者の資格を持つ者で、法律により医療従事者の規制を所管する機関により指名された者3名。
(b)法律により弁護士業務の規制を所管する機関により指名された高等裁判所の弁護士1名。
(c)大統領が指名する者1名。
4 最高裁判所長官が第3項の規定により裁判を任命できない場合、最高裁判所副長官がその裁判を任命するものとする。
5 大統領が第3項(c)の規定により指名できない場合、以下の者が指名するものとする。
(a)大統領の家族。
(b)指名する意思又は能力を有する家族がいない場合、大統領の近親者。
6 裁判は問題を調査し、任命後14日以内に最高裁判所長官及び下院議長に報告するものとする。
7 議長は、裁判の報告を受けてから7日以内に、下院に提出しなければならない。
8 裁判の報告は最終的なものであり、上訴することはできない。裁判が、大統領が職務を執行する能力があると報告した場合、下院議長は下院でその旨を公表するものとする。
9 裁判が、大統領が職務を執行する能力がないと報告した場合、下院は、その報告を採択するか否かについて投票するものとする。
10 下院の総議員の過半数の賛成で報告が採択された場合、大統領の任期は終了する。
第145条 下院議員は、以下の場合、総議員の3分の1以上の賛成により、大統領の弾劾の動議を提出することができる。
(a)この憲法又はその他の法律の規定に著しく違反することを理由とする場合。
(b)大統領が国内法又は国際法上の犯罪を犯したと、信じるに足りる重大な理由がある場合。
(c)重大な不正行為。
2 第1項の動議が下院の総議員の3分の2以上の賛成を得た場合、
(a)議長は、2日以内にその決議を上院議長に通知するものとする。
(b)大統領は、本条に定められた手続きの結果が出るまで、引き続きその職務を執行するものとする。
3 下院議長から決議の通知を受けてから7日以内に、
(a)上院議長は、大統領に対する告発を審議するために、上院の会議を召集する。
(b)上院は決議により、この問題を調査するために、上院議員11名で構成される特別委員会を任命することができる。
4 第3項(b)に基づき任命された特別委員会は、
(a)この問題を調査する。
(b)10日以内に、大統領に対する疑惑の詳細が実証されたと認定するか否か、上院に報告する。
5 大統領は、特別委員会の調査期間中、特別委員会に出頭し代理人を立てる権利を有する。
6 特別委員会が、大統領に対するあらゆる疑惑の詳細を、
(a)実証されないと報告した場合、当該告発に関して、本条の手続きを行うことはできない。
(b)実証されたと報告した場合、上院は、大統領に公聴の機会を与えた後、弾劾裁判の投票をしなければならない。
7 上院の総議員の3分の2以上が弾劾裁判に賛成する票を投じた場合、大統領の任期は終了する。
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