第111条【訴追の対象となる公務員】、第112条【第111条の公務員が在職でない場合】、第113条【全国腐敗行為防止制度】、第114条【責任追及期間、時効】
第4編【公務員、行政上の重大な不正行為又は汚職行為に関与した私人の責任、及び国有財産】
第111条 連邦議会の代議院議員及び元老院議員、国家最高司法裁判所の裁判官、選挙裁判の上級法廷の裁判官、連邦司法会議の議員、国務大臣、共和国検事総長、並びに国家選挙管理機構の総評議会議長及び選挙評議員に対して、その任期中に犯罪を行ったとして刑事訴訟を提起するには、代議院は、被告人に対して訴訟を提起する理由があるか否かを、出席議員の絶対多数決によって宣言しなければならない。代議院の決定が否決された場合、その後の手続きは全て停止する。ただし、これは告発の根拠を予断するものではなく、被告人がその任期を満了したときに犯罪の実行に対する告発を継続することを妨げないものとする。
代議院が手続きを行う必要があると宣言した場合、その対象は、所管機関が法律に従って行動できるように、その裁量に委ねられるものとする。
共和国大統領に対して刑事訴訟を提起するには、第110条に基づき元老院において大統領を告発しなければならない。その場合、元老院は適用される刑法に基づいて決定するものとする。
連邦構成体の行政府、地方議員、連邦構成体の高等裁判所の裁判官、地方司法会議の議員、並びに地方憲法によって自治権を認められる機関の構成員に対して、連邦犯罪で刑事訴訟を提起するには、本条に定める同様の手続きに従うものとする。ただし、この場合、手続きの宣言は地方議会に通知され、その権限を行使する際に、それに従って手続きを行うものとする。
代議院及び元老院の宣言及び決議は、覆すことができない。
被告人に対する手続きを認める宣言の効力により、その刑事手続に服する間、その者は解任されるものとする。訴訟の結果、無罪判決となった場合、被告人は職務を再開することができる。有罪判決となり、その犯罪が任期中に行われたものである場合、恩赦は与えられないものとする。
公務員に対して提起される民事訴訟に関しては、手続きの宣言は要求されないものとする。
刑罰は、刑法の規定に従って適用される。犯罪の実行により、加害者が経済的利益を得た場合、又は財産を棄損した場合、得られた利益及び不法行為によって生じた損害を補償する必要に応じて段階的に科すものとする。
金銭的制裁は、得た利益又は生じた損害の3倍を超えることはできない。
第112条 第111条第1段に規定する公務員が、その職務を離れている間に犯罪を行ったときは、代議院の手続きの宣言は要求されないものとする。
公務員が職務を遂行するために復職した場合、又は第111条に列挙されるものを除くその他の職務に任命若しくは選出された場合、その手続きは同条の規定に従って行われるものとする。
第113条 全国腐敗行為防止制度は、行政責任及び汚職行為の防止、摘発及び処罰、並びに財源の監督及び管理の権限を有する、あらゆる階層の政府機関の間の調整機関である。その目的を達成するために、以下の最低基準に従うものとする。:
(I)この制度は、以下の者によって構成される調整委員会を設置する。連邦高等会計検査院長、汚職撲滅専門検察庁長官、内部統制を所管する連邦行政府の事務局長、連邦行政裁判所長官、この憲法の第6条に規定する保証機関の長、並びに連邦司法会議の代表及び市民参加委員会の代表である。
(II)この制度の市民参加委員会は、透明性、説明責任又は汚職との闘いへの貢献が顕著な5人の市民によって構成され、法律の定める条件の下で任命されるものとする。
(III)この制度の調整委員会は、法律の定める条件の下で、以下の任務を負うものとする。:
(a) 地方制度との調整機構の整備。
(b)財源の監督及び管理、並びに行政上の不正行為及び汚職行為の防止、統制及び抑止に関する包括的な政策を、特にそれらを生み出す原因に関して立案及び推進すること。
(c) 政府の各階層の所管機関が作成する、これらの事項に関する情報の提供、交換、体系化及び更新のための機構を定めること。
(d)財源の監督及び管理に関して、各階層の政府機関が効果的に協調するための基準及び原則を定めること。
(e)委員会の職務の執行、並びにそれに関する政策及びプログラムの実施の進捗状況及び結果を含む年次報告書を作成すること。
この報告書に基づいて、行政上の不正行為及び汚職行為を防止するための制度を強化し、その実績及び内部統制を改善するための措置を採用するよう、機関に対して拘束力のない勧告を出すことができる。勧告を受けた機関は、それに対する配慮について委員会に報告しなければならない。
連邦構成体は、行政責任及び汚職行為の防止、摘発及び処罰の権限を有する地方機関を調整するために、地方腐敗行為防止制度を整備するものとする。
第114条 弾劾手続は、公務員の在職期間中、及びその後1年以内にのみ開始することができる。関連する制裁は、手続きの開始から1年以内に適用されるものとする。
公務員が在職中に行った犯罪の責任は、刑法に定める時効に従って執行される。その時効期間は決して3年を下回ってはならない。時効は、公務員が第111条に規定する職務を遂行している間は中断するものとする。
法律により、第109条(III)に規定する行為及び不作為の性質及び結果を考慮して、行政責任の時効を定めるものとする。その行為又は不作為が重大なものである場合、時効期間は7年を下回ってはならない。
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