私的正義論入門。
1 アンパンマンの正義
アンパンマンは日本で有名なキャラクターである。昔からテレビでアニメが放映されているので、大人も子どももみんな知っているし人気がある。
要約すると、ばいきんまんという敵を、「アンパンチ!」と叫びながらフルパワーでぶん殴ってやっつける正義のヒーローである。
顔があんパンでできているという、よく考えると意味が分からない不思議な設定なのだけれど、実はそこに作家やなせたかしの真意がある。
やなせたかしは戦争の経験から、正義のための戦争の欺瞞を痛感する。
徴兵される国民が、正義の名の下に殺し合い、無残に死んでいく。
多くの兵士が食糧不足で餓死し、戦後もしばらく国民は飢えに苦しむこととなった。
顔があんパンのヒーロー、アンパンマンはやなせたかしが信じる正義を表現するものである。
「困っている人に食べ物を届ける、立場や国が変わっても決して逆転しない正義のヒーロー」であり、「究極の正義とはひもじいものに食べ物を与えることである」。
2 幸福の追求
幸福の追求は、アメリカ独立宣言や日本国憲法などでも明記されているけれど、人間の権利、国民の基本的人権として尊重されるべきものである。空腹の者に食べ物を届けるというアンパンマンの正義は、普遍化すれば、「究極の正義とは自分そして他者を幸せにすることである」と換言できる。
それこそ18世紀にイギリスの哲学者ジェレミ・ベンサムが創始した功利主義の真髄である。
「小室直樹先生のお言葉を借りれば、政治家の徳は一般市民の道徳とは違う。
政治家の徳とは、「経世済民」である。
国民の経済生活を守ることが第一である。
平たく言えば、国民みんなが幸せに生活できる国家の維持である。」(私的現代国家論入門。)
政治哲学は、政治的な価値判断をする際の指標として、可能な限り単純で分かりやすく、普遍的なものでなければならないと考える。
それを政治的功利主義として指標化すれば実用的なものとなるはずであり、他の政治理論は正しいか正しくないか以前に、複雑すぎて実用的ではない。
3 政策科学
今や政治学も経済学も、社会科学として研究されるべきものである。科学の時代である、政策は科学されるのである(政策科学)。
必ずしも合理的には行動できない人間という生物の研究が、自然科学そして社会科学においても進んでいる。
どんなに立派な正義論も、ニーチェのダイナマイトを使えば木っ端みじんになるだろう。
(政治)哲学において今後どのような進歩があるのか予測することはできないけれど、あんパンでも食べながらアンパンマンの正義論でとりあえず満足して、前に進むしかないのかもしれない。
科学や技術が進歩して、自然科学だけでなく社会科学でさえ、急速な「進化」が起こりつつある。
・相対論の次のパラダイム、万物は進化する。:https://tanakah17191928.blogspot.com/2018/10/blog-post_12.html
・サピエンスの21世紀は「進化心理学/Evolutionary psychology」が支配する時代になる──心(Mind)のわけ(Reason)を解き明かす進化心理学とは何か?:これからの時代を切り拓く50の思考道具(note)
・この記事を英語で読む。