1 原文 太宗、侍臣に謂ひて曰はく、「古人云ふ、 『鳥、林に棲むも、猶ほ其の高からざらんことを恐れ、復た木末に巣くふ。 魚、泉に蔵るるも、猶ほ其の深からざらんことを恐れ、復た其の下に窟穴す。 然れども人の獲る所と為る者は、皆、餌を貪るに由るが故なり。』と。 今、人臣、任を受けて、高位に居り、厚禄を食む。 当に須く忠正を履み、公清を踏むべし。 則ち災害無く、長く富貴を守らん。古人云ふ、 『禍福は門無し、惟だ人の召く所のみ。』と。 然らば其の身を陥るる者は、皆、財利を貪冒するが為めなり。 其の魚鳥と、何を以て異ならんや。 卿等、宜しく此の語を思ひ、用て鑑誡と為すべし。」と。 (『貞観政要』より) 2 現代語訳 太宗がそばに控える家臣に言うことには、「古人は言った。 『鳥は林に住むも、それでもなお、高くないことを恐れ、さらに高い木の枝に巣くう。 魚は泉に住むも、それでもなお、深くないことを恐れ、さらに水中の洞穴に住んでいる。 それにもかかわらず、人に獲られてしまうのは、全て、餌を貪るためである。』と。 今の臣下は、任命されて高位にあり、多額の報酬を得ている。 当然、まじめで正しい行いをし、清廉潔白な生き方でなければならない。 そうすれば災いを招くことなく、長く富や地位を守れるだろう。古人は言った。 『禍福のための門があるわけではない、ただ人が自らこれを招くだけである。』と。 だから、自分の身を落としてしまう者は、全て、財物や利益を貪るためである。 先に挙げた鳥や魚と、何が違うのだろうか。 お前たち、よくよくこの言葉を考え、これを戒めとしなければならない。」と。 ・ 愛知県公立高校入試過去問古文・漢文現代語訳に戻る。